空白の玉座
「ユリウス王が仰っていたように、王太子はリリス王子が戻られるまで決めません。
国王陛下が亡くなったことも王宮の者には緘口令を敷き、国民に伝わらないようにしてください。
2人の王子が亡くなった今、国王陛下まで亡くなったことを知れば国民が不安になるでしょう」
「お言葉ですが、王妃。玉座を長く空けることは感心できません」
ルディア軍総司令官バートが口を開く。
バートは浅黒く焼けた顔をアメリアの方へ向けた。
「ベルトワール軍はアーレス王子の軍を退けた事で勢いに乗っています。
ウワサでは国王が出陣したという話もある。我が軍もそれなりの相手で臨まねば侵略されるのは時間の問題です」
「それでは全面戦争になります。疫病で弱っている我が国においてそれがいい案とは思えません」
「攻め込まれるのを待っていろというのですか!」
握り締めた拳がドンとテーブルを叩く。
軍で鍛えた逞しい体を怒りで震わせながら、バートはアメリアを睨んだ。
シン、と議場が妙な沈黙に包まれる。
「…王妃は所詮他国から嫁いできた身、この国の行く末に興味がないか」
沈黙を破ったのはクラリスの声だった。
「それとも――――」