来栖恭太郎は満月に嗤う
クレオに連れられて、リルチェッタが退室していく。

ドアが閉じる直前。

「……」

憎悪に染まったリルチェッタの視線が、俺を捉えた。

俺もまた、その視線を愉悦の表情で受け止める。

音もなくドアが閉じた後、俺は満面の笑みを浮かべた。

いい…実に愉快だ。

いつ喉笛を噛み千切りに来るかわからない雌豹と、一つ屋根の下で暮らす。

退屈な深い森の中のお屋敷生活などもう飽き飽きだ。

目の覚めるような、己の命をも懸けた刺激があるからこそ、人生には張りというものが出てくる。

凡庸と過ごす人生に何の意味がある。

リルチェッタも、クレオも。

せいぜい俺の人生の引き立て役として派手に踊るがいい…。

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