来栖恭太郎は満月に嗤う
クレオはリルチェッタに視線を向ける。

「自分はこの屋敷で来栖様の執事を務めております、クレオ・パトリックと申します。本日よりリルチェッタ、貴女の上司兼教育係となりますので、どうかよろしく」

小柄なリルチェッタを見下ろし、慇懃な態度を見せるクレオ。

同じ屋敷の使用人となり、格下である筈のリルチェッタにさえ、その姿勢は崩さない。

木乃伊然とした姿でありながら、紳士的な態度だった。

その光景を見ながら、俺は喉の奥でくくっ、と低く笑う。

そうだ、笑わずにいられるか。

善人ぶっていても、クレオもまたリルチェッタと同じなのだ。

この男もまた、俺に憎悪を抱く一人。

包帯に執事の服装という滑稽なあの出で立ちも、少なからず俺が原因と言っていいのだ。

それを億尾にも出さず、クレオは恭しく俺に頭を下げる。

取り澄ましていられるのも今のうちだ。

クレオ、貴様もまたどす黒い怨念に囚われた一人。

今にその腹のうちをぶちまけさせてやる…。

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