恋人はトップアイドル
「優美ちゃんは、ただのスタッフだよね?」

・・時が、止まるかと思った。
動揺したらいけない。
戸惑ったらいけない。

そう思うのに。
息が、一瞬できなかった。


堂本さんの言葉を思い出す。

覚悟。


この恋を、守りたいのなら------。


「はい。そうですけど。」


あたしは、真面目な顔でそう答えた。何ともない、というように。


「・・そっか、だよね!じゃ、あたし帰るね。またね!」

ユキさんは少し黙ってあたしを見つめた後、笑ってあたしの横を通り過ぎて行った。


その瞬間、ブルッと身体が震えた。


なにが怖いのか、わからない。

いけないことをしているわけじゃないのに。

だけど。

あたしの気持ちを見透かすかのような瞳が、
あたしには輝を想う資格なんかないとでも言うような瞳が、

すごくすごく、怖かった。


あたしは、一般人。

どんなに輝の近くにいても、彼とは、違う世界にいるんだ------。










記者会見が終わった。

内容は、ほぼ頭に入っていなかった。
ただぼーっと、たくさんの記者たちのフラッシュを浴びる輝を、眺めていた。


スタッフのミーティングも終わり、解散になった。


次は3日後。大阪へ向かい、リハをした後、大阪公演が始まる。

日にち的には5日後だ。

それが終わって帰ってくれば、ツアーは一旦夏まで持ち越しになり、あたしは高校生活最後の年を迎える。

春の体育祭についても、大阪公演が終わったらすぐ生徒会役員たちを召集して、最終決定をしなければいけない。


一般人のあたしにも、やるべきことは、たくさんあるんだ。


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