恋人はトップアイドル
「・・俺がそう簡単にお前を帰せるわけねーだろーが。」

輝は、当たり前だろ。とでもいうような顔だ。

それがあまりにかっこよくて、あたしは思わず顔が熱くなった。

「・・っち、車さえいなけりゃ一緒に帰れんのに・・。」

そう続ける輝が可愛くて、あたしは微笑む。

普通にあのままファンでいたら、絶対に知れなかった、輝の一面。

それを、態度や言葉で知るたび、あたしは嬉しくなる。
と同時に、強くなりたいと思う。

誰にも惑わされないよう。
この手を、離さないよう。

「でも、輝が今大事にすべきなのは、このツアーでしょ?」

あたしの言葉に、輝はハッとした顔を見せる。

「あたし、この3日間楽しかったよ。すごく。スタッフとしても、ファンとしても。多分、ファンのみんなもきっともっと、Rを好きになったんじゃないかな。」

それくらい、ステージもトークもダンスも洗練されていたし、面白かった。

そして何より、ファンへの愛が感じられた。

「だから今は、輝は自分のことを大事にしてよ。あたしはちゃんと、ついていくから。ファンをもっと、幸せにしてあげて?そのためなら、あたし我慢できるから。」

ファンは「輝」が誰よりも理想で誰よりも素敵だと思うから、輝を好きでいてくれる。

はっきり言えば、そこには現実は必要ない。

自分たちの都合のいい理想の上に、輝がいてくれればいいんだ。そしてそういう部分をついて、輝たちRは、成功を収めてる。

それを考えれば、アイドルのスキャンダルがどれだけタブーなのかってことくらい、素人のあたしにだってわかる。


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