恋人はトップアイドル
そうして、ずっと優美の横顔を見ていた。俺には見せない、優美の表情。それが垣間見れる。安心する。

この空間にずっといたい。

そう思った。

5分くらいか。優美が戻ってきた。

「・・あ、ごめんねっ。食べよう。」

優美が申し訳なさそうに笑う。向かい合わせに座って、2人で「いただきます」と手を合わせた。

「・・うまい。」

オムレツはふわふわ。トーストの焼き加減も最高。ヨーグルトは普段食べねえけど、りんごの甘さが自然でよかった。身体にいいことをしてる気分になった。

「よかったー。輝、好きなものとかある?そしたらまた作・・」

ニコニコと嬉しそうに笑っていた優美の表情が、止まった。

「優美?」

「・・あ、また、来れたら!来れたら、今度は、輝の好きなもの作るねっ。」

優美・・・。

優美の寂しそうな笑顔に、胸が痛む。

なんでお前はそうなんだよ。

俺は食いかけのトーストを置いて優美に近づく。優美が不安げに俺を見上げた。少しばかり潤んでいる。
そのまま優美のおでこにキスを落とした。

「わがまま言え。って、言っただろ?なに我慢してんだよ、アホ。」

「あ、アホって・・!だって・・・。」

「また来るに決まってんだろ。つーかこんな広すぎる家にお前を一人にさせとけるかよ。」

「でも・・。」

「でも?」

優美の言いたいことはわかってる。だけどそれは、優美から言ってほしい。

「来れる、の?バレたりしない・・?」

不安げに、優美の表情が歪んだ。

会いたいとは言っても、難しい。時期的にも、俺の仕事も。

そんなこと、優美はよくわかってるんだ。だけど、そのせいで優美に我慢させなきゃなんねえなら、リスクなんかいくらでも背負ってやる。

「優美、昨日、気づかなかったか?」

「え・・?」

「俺らが乗ってきた車、前の車と違ったろ?」

俺の言葉に、優美はキョトンとした表情を見せた。

どうやら気づいてねえらしい・・・。

俺は苦笑した。

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