恋人はトップアイドル
「車、買ったんだ。まあいつまでもマスコミを欺けるわけじゃねえけど・・。頻繁に、じゃなければ、なんとか優美と会う時間くらいは稼げる。まあそれでも、月に・・二回、会えればいいほうだけど。」

「それ・・、もしかして、あたしのため・・?」

優美の表情が曇る。そういう行為を喜ばないのは、一番よくわかっていた。

「ちげえよ、俺のため。俺が会いたいんだよ。お前に。だってこのままじゃ俺たち、夏まで会えねえんだぜ?お前はそれで平気なのかよ?」

「・・・やだよ。」

優美は戸惑いがちに、そういった。素直になってくれたことが嬉しい。

「な?だからいいんだ。それにあの車、中古屋で堂本に買ってきてもらったんだけどよ、10万もしなかったらしい。」

「堂本さんが?」

「ああ。あいつ・・、俺らのこと、応援してくれてるからさ。」

堂本は、本気で俺と優美を見守ってくれている。それが有り難いし、何より今は、堂本に頼らなければ、こうして会うのもままならない。

「・・感謝しなきゃね。」

「ああ。」

優美は優しく笑うと、珍しく自分から俺に抱き着いてきた。

「・・あたし、頑張れるから。」

優美の甘い匂いが、鼻をくすぐる。その柔らかさが、俺を刺激する。

「ああ。一緒に、な。」

優美を強く抱きしめ返す。
簡単には会えないからこそ、会える時はこうして、優美の体温を感じてたい。

仕事はやめられない。
だけど優美も手放せない。


ずるい考えかもしれない。
甘いのかもしれない。


でも俺は、この2つを守るためなら、自分の限界を越えたっていい。

仕事での地位が確率するまで。
優美が大人になるまで。


我慢するさ。
今までと同じように。




その時、ポケットに入れていた携帯が震えた。
優美が腕の中で、顔を動かすのがわかった。

ディスプレイをみると。


「・・社長?」


俺の呟きに、優美が反応する。
昨日の今日だ。
なんだ?


俺は一応優美から少し離れて、通話ボタンを押した───。




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