恋人はトップアイドル
健人がげんなりとした顔を見せる。

「だって今日は取材なんだよ!?わかってんの!?」

「わーってるよ。でもだからって気合いいれても、俺たちのやることは変わんねーだろ。」

健人の言葉に、あたしは詰まった。
た、確かに・・・。

「むしろお前が力みすぎなんじゃねーの?」

うっ・・・。

「だ、だって・・」

「ほら、力抜け。」

ぽんぽんと、健人の両手で肩を叩かれる。

「俺がついてる。一人じゃねえよ。」

健人・・・。

「あ、あたしそんなに強張ってた?」

「んーまあ。でも今ちょっとマシ。」

健人のニカッと笑った顔に癒される。

「ありがと。」

「生徒会長守んのが副会長の役目っすから。」

「なにそれ。仕方ないなあ。ネクタイはあたしが直してしんぜよう。」

「おーちゃんとやれよお前。」

「何様だっつーの。」

健人のいい意味でいい加減な部分は、真面目すぎるあたしを救ってくれる。なんの悪戯なのか、健人が副会長でいてくれて、本当によかった。でもこのコンビも、あと少しで解消かと思うと、少し寂しい気もする。

「こちら準備終わりました。マイクつけても大丈夫ですか?」

「はい。」

「たのんます。」


2人して頷いた。

ある意味、勝負の時だ───。







授業中の教室を周りながら学校紹介をするというのは、結構至難の技だった。なんせ取材してんのはR。されている側のあたしたちの方が、お供え物だった。

キャーキャー騒ぐ女子たちを宥めるのはスタッフでも無理で、代わりに毎回健人が叱りつけるハメになっていた。

1学年周り終える頃には、健人はスタッフの人たちに感謝されていた。

「ありがとう鈴木くん。」

「鈴木くんってすごいねー、俺尊敬!」

「いや全然すよ。」

悠さんや優太くんからも、お礼を言われてる。
まあ確かに健人からしたらこんなのヘでもないだろうな。

でも。

「あーーそろそろ喉いてえ・・。」


< 225 / 254 >

この作品をシェア

pagetop