恋人はトップアイドル
「バイトにかまけて・・、いい気になってるつもりなんかなかったのに・・。でも実際、全然、勉強できてなくって・・・。」

悔しそうに、優美が唇を噛み締めた。握りこぶしを作って、瞳は今にも泣き出しそうだ。

「そんなに大変なことなのか?」

わざと、馬鹿にしたような言い方をした。
すると案の定、優美は顔を上げ、俺を軽く睨みつけた。こんな強気な態度を見るのは初めてかもしれない。

そんな顔もすんのか。

今まで知らなかった一面。
それが知れて、内心少し浮き上がっていた。

「大変とか、大変じゃないとか、そういう問題じゃない。あたしが、あの学校の生徒会長である以上、やり通さなきゃならないことがあるの。」

気迫すら感じる、優美の強い意志。

「同率1位なんて、あっちゃいけないの。あたしは、生徒会長であることで、大学の推薦を貰ってる。それが、あの学校でどれだけの意味を持つか。受験組は、3年間緊張の中にいるのに、あたしはそれを免れてるの。だからせめて、恥じない会長でなくちゃ・・、みんなに・・後輩に、顔合わせができない。」


───なるほど。
なんとなく、見えてきた。


「だから?」

「・・え?」

「だから、お前はどうするんだよ。何をする?今から。もうテストは終わった。またいきなりテストなんてあるわけじゃないんだろ?」

「そ、れは・・そう、だけど。でもっ・・勉強しないとっ」

「勉強ならしてたじゃねえか。」

俺の言葉に、優美が戸惑いの表情のまま動きを止める。

「朝は英語のニュースみて、学校でもやって・・、さっきも。あんなにやって、勉強ばかりして、次のテストで1位とって、でもそしたらお前は満足なのか?」

優美の表情に、陰りが見え始める。
ある1つの考えが、徐々に形を成し始めていた。

< 240 / 254 >

この作品をシェア

pagetop