恋人はトップアイドル
「お前、何のためにやってるんだよ。」

俺は厳しく言い放つ。

「大学の推薦もらうためか?ほかの生徒に慕われるためか?どんだけ偉いか知らねえが、校長に認められるためか?」

優美の目から、一筋、涙がこぼれるのが見えた。

抱きしめてやりたい。

でも、まだだ。

「お前はそんなことのために会長やってんのかよ。ただ代表名乗ってんのかよ。なあ。そのためなら、何を捨ててもいいのか。自分のやりたいことも。・・・・俺とも、会えなくなっていいのか。」

結局、本音はそれなんだ。
俺の本音は。

ただ、お前と離れたくねえだけなんだ。

だけど優美、お前はさ、自由なんだ。俺から見たら、遥かに自由なんだ。
どこへだって行ける。
なんだって出来る。

縛るなよ。自分を。

「俺との時間も、なくていいってことか。バイトも、しなくていいってことか。」

「違う!」

いきなり、優美が声を上げた。
涙で濡れた瞳が、俺を見つめる。

「違う、輝・・。違う・・・。」

そう言って、優美はまたうなだれる。
痛々しくて、愛おしくて、どうしようもなくて。

我慢できずに立ち上がり、優美の隣に座ると、めいいっぱい抱きしめた。
するとそれまで静かに泣いていた優美が、突然声を上げて泣き始めた。

小さな手が、俺の腕を掴む。

何かを吐き出すように、それはとても、辛い泣き声だった。


俺はとにかく、そんな優美が壊れないように、俺から離れないように、抱きしめ続けた。








「大丈夫か・・?」

ひとしきり泣いて、優美はやっと落ち着いた。

「きついこと言ってごめんな。」

優美の頭を優しく撫でる。

「ううん・・。ありがとう、輝。あたし・・・、こうしたかったんだね、ホントは。」

優美は首を振り、どこか他人事のように言った。

「泣きたかったんだね・・。」


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