迷宮の魂
美幸の島での生活は、これまでのところ、特にこれといって変化はなかった。
昼間の空いている時間は、観光がてらにあちこち出歩き、夜はエリーで仕事をする。単純にその繰り返しだった。
島内観光の時は大概莉奈が一緒である。
たまに遥を誘ってみたりするのだが、彼女は遠くまで出歩くのが面倒臭いと言って断る事が多い。一度、偶然に会った海岸横のカフェに行く位で、遥は基本的に誰かと連るむという事をしない。
店の方は、客の殆どが常連客で、一ヶ月もするとその顔触れを覚えてしまった。遥が言っていたように、仕事と呼べるようなものではなく、顔見知りになった常連客達と酒を飲んでカラオケ三昧を決め込んでいれば、勝手に時間が過ぎ、客達もそれで満足していた。
美幸から見ると、皆、仕事というよりも、遊んでいるという感じに見える。たまに酒癖の悪い客も居たりするが、その辺はママが上手くあしらってくれる。
島の人間はとにかく酒が強い。店に来れば、ボトルの一本や二本、たちどころに空けてしまう。娯楽の少ない離島だから、飲む事が唯一の楽しみなのだろう。
島には、エリーのような飲み屋が思っていたよりも多いと知った。
居酒屋もあれば、東京にあるようなちょっと小洒落たカフェバーも、数軒だがあるし、フィリピンパブまで一軒あった。
遠く、異国の地から出稼ぎに来た女の子とそこで知り合い、結婚した島の人間も居るらしい。
そういえば、島の独身男性は、八丈島へバイトに来る女の子を嫁にでもしようと狙っていると遥が言っていた。
確かに、島の若者達はここで生活していると出会いが限られているから、必然的に美幸達のような他所から来た女に興味津々といった眼差しを向ける。堂々と女を抱かせてくれる店は無いから、彼等は飲み屋の女達を必死に口説き、あわよくばを狙っているという訳だ。
島という開放感もあってか、飲み屋でバイトをしている女の子の中には、一時の恋を謳歌する子も少なくないようだ。
美幸もエリーに来た初日からそういう客に口説かれた。それも、結構あからさまに一夜を共にしようと、話の節々に匂わせたりするものだから、怒るよりも呆れてしまった。