迷宮の魂
 
 環境といっても土地のせいばかりではない。

 美幸自身から言わせれば、男関係の影響が最も大きかった。

 元来、美幸は男に惚れっぽいところがあった。そして、一旦好きになってしまうと、ボロボロになるまで相手にしがみ付く。

 八丈島に来て、そういう呪縛から解き放たれたのかも知れない。

 しかし、元々の惚れっぽさが簡単に治る訳ではなく、本人の自覚していないところで、その虫は静かに蠢いていた。

 美幸はそう思っていないが、思春期の頃から異性に言い寄られると、仮にその相手に好意を抱いていたとしても、拒絶反応を見せてしまう性格をしていた。

 勝巳のようにあからさまに言い寄られると、却って興味を失ってしまうのだ。

 彼女は、自ら能動的にならないと好きという感情を自覚出来ない。それと、興味を持った相手に女がいたとか、誰かと恋愛関係が明らかな男となると、俄然、心に火が点いてしまう。

 デパートに勤めていた時に不倫を承知で関係を持ったのも、そういった事から来ていた。

 男関係や恋愛に於けるそういった自分の性格を美幸はまるで自覚していない。

 自ら辛く苦しい場面に飛び込む事でしか、己の精神を満足させられない性質なのだ。

 けれども、それは一時の激情から得られる満足であって、その反動は彼女の精神を必ずずたずたにして来た。

 そういう性質を自覚していなくとも、心は本能として安息を求め、この島に来たのだが、奥底に潜む欲求は、既に新しい激情を欲し、種を植えていた。

 その芽が顔を覗かせたのは、遥が直也に好意を寄せているという話を莉奈から聞いた瞬間だったかも知れない。

 それが決定的なものになったのは、遥が風邪で何日か仕事を休んだ時の事であった。







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