迷宮の魂
「直さんのそういう話は結構あるんだよ」
勝巳の話はまだ続いた。
「ほら、エリーは年中若い女の子が入れ替わるじゃない。するとさ、中には直さんに好意を持つ子も出て来たりするんだけど、今までみんな相手にされてないんだよね。ある女の子なんか、直さんの部屋まで忍んでったらしいんだけど、結果はママの時と同じ。まさかホモじゃないかっていう奴も居たけど、こんな噂が直さんの耳に入ったら怖いから、誰も口を噤んでるけどね」
「じゃあ、直さんといい仲になった女の子って、今まで一人も居なかったの?」
「そうだよ」
「今も?」
「どうかなあ、今居る子達の事は、一緒に働いてる美幸ちゃんの方が詳しいんじゃないの」
「そうでもないよ。私達のプライベートは、却ってお客さんの方が知ってるんじゃない?」
美幸がそう言うと、勝巳が、実はねえ、と話を変えて来た。内容は店の女の子達の噂話で、前に莉奈から聞いた話と変わらなかった。
ただ、美幸が好奇心をそそられたのは、遥が島に流れて来た経緯だった。
「あの子さあ、昔、自分の旦那を刺して刑務所に入ってたんだ」
「うそ……」
「本当さ。俺、本人から偶然聞いたんだもん」
話の続きを聞きたかったが、いつの間にか時間が5時近くになっていたから、今日は諦める事にした。
「今度、続きをゆっくり聞かせて」
と勝巳に言うと、彼はまた二人きりで会えると思ってか、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにした。
少しは自分に好意を持ってくれたのだろうとでも思ったのだろうか。
その気配が美幸に伝わり、彼女はぞっとする心持ちになったが、おくびにも出さず、
「明後日が私の休みだから、時間を気にしないでゆっくり会えるよ」
と言った。
「島に一軒、すごく美味しいうどん屋があるんだ。その時に連れてってあげるよ」
勝巳が得意気に言うのを聞いていて、
飲み屋の女の子を誘うのにうどん屋とはねえ……
仕方ないか、何も無い島なんだから。
と、吹き出すのを堪えた。完全に勝巳を馬鹿にしている。
寮であるアパートの近くで降ろして貰い、美幸は帰った。