迷宮の魂
喚きながら暴れだした彼女は、直也の襟を掴んだかと思うと、そこら中のグラスやボトルを投げつけた。
他の子達は、みんな外へ出てしまい、事の成り行きを見守っている。何度か同じ場面を目にした事のある子は、冷ややかな眼差しをし、初めて目の当たりにした子は、驚きと恐怖で身を硬くしていた。
その様子をじっと見ていた美幸は、遥が泣き叫びながら喚いた切れ切れの言葉に引っ掛かるものを感じていた。
人殺し……
捕まっちまえ……
あんたと、あたしは一緒……
同じ穴の狢じゃないか……
あんたを理解できんのは、あたしだけ……
あたしだけなんだよ……
あたしじゃなきゃ……
あんたぁ、ごめん。死なないでぇ……
前後の脈絡もなく吐き出された言葉は、美幸の中で複雑なパズルのピースとなって散らばった。
ひとしきり喚いた後、遥はぐったりとなり、直也に抱き抱えられ、連れ出された。
美幸はそのまま二人を放って置く事が出来ず、一緒になって遥を部屋まで連れて行く事にした。
直也が自分の右肩を入れ、美幸が遥の右腕と腰を支えながら歩いた。
気を失った遥の身体は重く、容易に歩けなかった。道の途中でママがやって来て、
「ほんとうにいよいよ困った子だよ」
と愚痴り、
「美幸ちゃんありがとうね。後は私と直さんで運ぶからお店に戻って」
と言った。
美幸は、
「いえ、部屋まで送ります」
と言い、構わずにいた。
ママもそれ以上は何も言わず、一緒になって肩を貸そうとしたが、美幸がぴたりと遥の身体を自分の方へ寄せているから、手出しが出来なかった。