迷宮の魂
遥が島を追われるようにして出て行ってから十日ばかりした8月の初旬。直也が暫く東京へ行って来たいので休みをくれとママに言って来た。
今まで、休みらしい休みなど取った事の無い彼が、突然そんな事を言い出したものだから、ママの方もその理由を聞こうとした。
「急用が出来たんです。何日も掛からないと思いますから」
としか直也は詳しい理由を言わず、ママも仕方無く了承するしかなった。
東京へ行く?
どうして急に?
酩酊とフラッシュバックの中で呟いた遥の言葉が、繰り返し美幸の頭の中を駆け巡る。
パズルのピースを無理矢理嵌めてみた。
不思議と一つ所へ収まって行く。
パズルのピースは遥の言葉だけではなく、勝巳から聞いた直也の話も形となって加わった。
昔、人を殺した……
やくざ……
あんたは、あたしと同じ穴の狢……
遥は夫を殺した……
刑務所帰り……
直也が突然、東京へ行くと言い出したのは、遥が関係している……
間違い無い……
何事も、そう結び付けてでしか考えられなくなっていた美幸だった。