雪がとけたら
…サアッと風が通りすぎた。
西君の手に力が入る。
『…なぁ悟子。今お前、泣いてる?泣いてるかな…。ごめんな。辛いよな。そういう辛さは…俺が一番知ってる。
…なぁ悟子。俺今から、我が儘言うよ?最後の我が儘だと思って聞いて欲しい。
…泣いて、悟子。俺のために、泣いて欲しい。身体中の水分がなくなるんじゃないかってくらい…泣いて泣いて、泣いて欲しい。冬の間…雪が降ってる間は。
そして、雪がとけたら…
雪がとけたら、笑って。
いつもの笑顔で、笑って欲しいよ。
俺が一番、好きな笑顔で。
…いつも笑ってはいられないかもしれない。これからもっと、辛いこともあると思う。
そんな時は泣いて、悩んで、苦しい時には誰かに頼って…そうやってまた、笑顔に戻って。そんなことを繰り返しながら…悟子には、精一杯生きて欲しい。精一杯生きて、しわしわの婆ちゃんになるくらいまで生きて…そしたらまた、会おうな。
大丈夫だよ。少し離れてるだけだから。その間悟子は、悟子の人生を生きて。俺はそれを、ちゃんと見守ってるからさ。
じゃあ、ほんの少し。ほんの少しだけ、な。
』