片思い?両思い?


話が終わると兄貴は部屋に行ってしまった。

・・・茜さんは確かに憧れではあたったけど、手の届かない存在だって事はどこかでわかってた。

俺は中学3年の時に、同じクラスの女を好きになった。

ちょっとお調子者で、可愛くて・・・男女問わず仲良くなれる奴だった。

高校は別になっちゃったけど、機会があったら俺の気持ちを伝えたいと思っていた。


それから少しして兄貴が言った

「夕陽、小渕 円って知ってるか?」

「あ?・・・ああ・・・」

小渕 円。

俺の好きな女だけど・・・・。

「小渕がどうしたのか?」

「ああ・・何かお前に本を貸したとか言ってたけど・・・」

本?

そんなもん借りたかな?

「返して欲しいから、今週の日曜日にうちに来るって言ってたぞ」

は?

「マジ?」

「まじ」

「・・・わかった・・・探しておかなくちゃダメだな・・・・何の本だったかな・・・」

それでも、小渕に会えることで俺は浮かれていた。

まさか、茜さんと兄貴があんなことになるとは思いもよらず・・・・。




「ねぇな・・」

どこを探しても、何回探しても見つからない小渕の本。

だいたい借りていないような気がするのだが・・・忘れてるだけか?

又貸しなんかするわけないし・・・。

あいつ、誰かと勘違いしてるんじゃねぇ?


そんなことを毎日繰り返していると、日曜日がやってきた。

兄貴が駅まで迎えに行くとかで、俺は家で留守番。

「茜とのデート断って会わせるんだから・・・ちゃんと本返せよ」

「あ・・・ああ・・・」

本が無いなんて言ったら殴られそうだから、やめた。


家から駅までは10分くらい。

ガチャ。

玄関のドアが開いて

「おじゃましまーす」

久しぶりに聞いた小渕の声に・・・心臓がバクバクする。

やべ・・うまく話せるかな・・・俺。





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