とりかえっこしようよ
 あれからまた1年。



 お父さんは、若かったこともあり、がんの進行が思ったより早くて、余命1年の宣告より早く亡くなった。


 お金のこともあったし、お店と家を失ったお父さんには、がんと闘う気力が残っていなかったんだと思う。


 抗がん剤治療を拒否して、痛み止めのモルヒネと下剤の量だけがどんどん増えていった。


 
 亡くなる間際、1日だけ外泊の許可が下りて、やっと家族水入らずの時間が過ごせた。


 お父さんのお店のものはほとんど取られてしまったけど、小さいカメラだけはこっそりおばあちゃんの家に運んであって無事だった。



 毎日、いろんな人のいい顔を撮って、生き生きと仕事をしていたお父さん。


 これが最期になるかも知れないからって、家族写真を撮った。


 病気でやつれて、痛みに耐えていたはずのお父さんが、必死に笑顔を作っていた。



「さあ、笑って笑って。松本写真館で撮る写真は、みんなが必ず笑顔になるんだから」


 そう、お父さんはみんなを笑わせるのが本当に上手だった。


 私とハリーを撮ってくれる時も、いつも笑わせてくれた。


「とっておきの可愛い光を、友達に送ってあげなさい」って。



 
 お父さんを中心に、家族みんなで寄り添うようにして写した。


 私はいつものようにハリーを抱っこして。



 撮り終わった時、お父さんは椅子から崩れ落ちた。


 




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