君に染まる(後編)
「創吾くん!!!!!!!!!!!」
私だけがビクッと反応する。
プレオープンのためロビーには私たち以外誰もいない。
そんな中に怒号とドスドスという足音がこちらへ向かってくる。
「創吾くん!!君は!!!一体なんてことを!!!!!!!」
管咲さんのお父さんが顔を真っ赤にして鬼の形相で私たちの前で立ち止まった。
後ろの方から管咲さんもゆっくり歩いてくるのが見える。
慌てて立ち上がる私と違いわざとらしくため息をついて面倒くさそうに先輩は立ち上がった。
「何事ですか、管咲会長。せっかくお越しいただいているお客様が耳にしたらこのホテルの品格が下がりますよ」
畠山さんに私を頼むよう手で合図すると、畠山さんが私を少し離れた場所へ誘導した。
「君がその小娘を抱えて会場を消えたから、私と蘭は矢面に立たされたんだ!!!対処をしていたんだぞ!!!!婚約者じゃないのか、あれは嘘だったのかと散々嘘つき呼ばわりをされた!!!!!!」
「お言葉ですが会長。人の恋人に向かって小娘というのはやめていただけますでしょうか」
「小娘に小娘と言って何が悪い!!!!!この泥棒猫!!!!!!!!!」
私に向かって怒鳴る。
「それと、私は蘭さんと婚約者だなんて公には発表していないし親同士で盛り上がっているから話を合わせていただけで正式的なものではないでしょう。なぜ今日の客人が知っているんです?会長が言いふらしたということでしょうか」
「それの何が悪い!!幼いころから一緒にいて、親同士も認めていて、今回このような大きな仕事も成し遂げた2人が婚約することに何を疑う人間がいるか!!!言いふらしていなくてもおのずとそういうことだと察するだろう!!!!」
「そんなこと私には関係ありません。私は今日まで蘭さんのことはビジネスパートナーとしてしか見ていません。この先もずっと」
「なんだと!!!!!」