合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
祭壇の前、父はあたしを雅樹に受け渡した。

「汝木村正樹は、この女柏木裕子を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「誓います」

「汝柏木裕子は、この男木村正樹を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「誓います」

あたしのブライドメイド舞子と雅樹のグルームイド樹があたし達の横に進み出た。

「今日、父と子と聖霊の名により、私たちのなした厳かな誓約に基づきなされ、私たちの結婚の絶えざるしるしとして、この指輪をあなたの指にはめます」

舞子があたしの手から手袋を受け取り、樹が雅樹に指輪を渡した。

二人の手に、交互に指輪がはめられた。

「神の名によって、あなたがたが夫婦となったことを宣言いたします。神が結び合わせてくださったものを人は離してはならない」

神父様の宣言を合図に、雅樹があたしのベールを上げた。

「裕子、愛してる」

小さな囁きと共に、重ねられた唇。

あたし達は夫婦となった。
< 101 / 215 >

この作品をシェア

pagetop