合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「姉貴? 用意できた?」

「よっしゃぁ~」

ベビーシートを樹に任せ、あたしは思わず、拳に力を込めて雄叫びを挙げた。

「何、気合入れてんのさ」

まるで、阿呆を見るような目つきで樹があたしを見る。

「奮い立ってると言ってもらえないかなぁ」

あたしは、腰に手を当て、スニーカーを履いた足を広げて仁王立ちに立った。

「角生やさないようにね。自然体が一番だよ。それでなくても姉貴は男前なんだから」

樹がクスクスと笑いながら妙なことを言う。

「なにそれ」

「いや、赤ん坊連れてんだから、もっと堂々としてりゃいいんだよ」

「そういうもん?」

「そういうもんじゃない? この赤ん坊が目に入らぬかぁ~ みたいな」

なんか樹の物言いに、笑ってしまう。

樹にかかると、あたしの気負いも何処かへ吹き飛ばされちゃうね。
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