わたしと保健室と彼~4つのお題+α


 そっとあたしの手からお見合い写真を奪うと、そのまま机に置いた。


「――っ、具合なんて悪くないっ!あた、あたしは……っ!」


 もうダメだ……

 堰を切ったように、両目から止めどなく涙が流れる。


「これ、見つけてっ……先生、お見合いするなんて、嫌なのっ!」


 言い切って、手の平で乱暴に涙を拭う。

 涙で滲む視界じゃ、先生がどんな顔してるか分からなくて、余計に不安になってしまう。

 ふと、先生の手が頬にあてがわれて、優しく包んだ。


「……お見合い、しませんよ?」

「――へっ…?」

「これは親が勝手に送ってきたもので、既にお断りしてありますよ。今、処分するところで」

「しょ、ぶん…?」


 あまりに呆気ない答え。

 涙が、引っ込んだ。


「ええ。他のものと一緒に」


 目尻に残った涙を、もう一度拭う。

 クリアになった視界、先生の指差した先にあったのは、積み上げられた革表紙の数々。


 ま、まさか。あれ全部――


「毎月山のように送られてくるので、中なんて一々見ませんし」


 恐る恐る近づいて手に取る。
 重く高級感漂う革表紙を開くと、似たような振袖姿の女性の写真が貼ってあった。



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