天使降臨
(『小説・堕天使無頼』改題)
「至福。って信じる?」
「サキ、当たり前だよ。至福なんて何度でもあるんだよ」
「しあわせ。とても。しあわせ……でした」
「でした?」
「あなたは自分の名前を思い出せますか?」
名前? 会社の名札をお前も見ただろう?
俺の名前……?
記憶だって?
記憶。空虚な
貼り付けたような?
「ほんとうの名前……」
見上げるサキの大きな瞳がガラス玉に見えた。
その、金色の瞳が。