花鎖


「おにいさま・・・」
「レナ・・・」

少女がその大きい瞳をぎゅっと瞑ると、長い睫毛が顔に影をつくる。少女を愛おしそうに見つめ、そのまま口付ける。

否、口付けようとした。

邪魔された。誰、というより、何、と言ったほうが良いだろう。
青年と少女の唇が触れる、というときに、物音がした。その方向へ視線をやると、1匹の白い兎と、青年が飲んでいた紅茶の割れたカップがあった。

邪魔されて不機嫌になった青年は、その端整な顔を歪ませる。

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