晴男と雨女
廊下を出て男勝りな子が居る教室へとたどり着いた。俺はすぐに見つけた。教室に入った男に話しかけて呼び出してもらった。
「お!そこの!窓際のメガネでお下げの女の子呼んでもらえるか?」
男がその子の所へ行く。その間にも「優貴斗先輩だわ!」とか「カッコイイ!」と聞こえてきたが、その辺は無視してみた。
「私に何か御用ですか?」
呼んでもらった子がこちらに来て立ち止まり、俺を見上げてくる。ふと、保育園の頃を思い出した。泣いていた女の子はすぐに引っ越したから名前すら知らない。でもまさかと思った。
「お前さ、何で化粧しないんだよ?絶対可愛くなると思うんだけどなぁ。」
「人それぞれですよね?あんなケバケバしいのがいいんですか?高凪優貴斗さん。いえ、先輩でしたね。」
俺は眉間に皺を寄せた。そりゃそうだろう、初めて会うのに俺の名前を知ってるんだから。名前を呼ばれたことに疑問があったが、気にしないことにした。
「いや、軽くだぜ。」
メガネを取ろうとすると酷く嫌がった。その後彼女は机に向かって走っていった。似てるからなのか、それとも・・・新しい恋か。
「入学式だしなぁ、また来るわ!」
それだけ言って自分の教室に戻った。
まさか俺が行った事でこの後、彼女が二年と三年から苛められる対象になるとは、思いもしなかったのだ。

教室に帰ると亮と要が近寄ってくる。
「もうすぐ入学式だね。」
要の笑いには何かがあるからいやだな。
「さっきのメガネちゃんが気になるんだよな、優貴斗は!」
何で俺がいじられなきゃならねぇんだよ。確かにメガネの子は気になるぜ。あいつにちと似てるからな。
「どうだっていいだろうよ。」
「でもね、優貴斗。気をつけたほうが良いよ。二年と三年女子がね、優貴斗が女に興味ないのに、一年の子に興味を持ったとか言い出してるよ。」
「だからなんだ?」
「つまりだ。苛められる対称になるかもだぞって言いたいんだよ。」
「そうそう!優貴斗!あんたが動くことでどうなるか分からないんだから気をつけてよ!」
良子にまで釘刺された。あいつがあのこと同じなら俺が出る幕もないと思う。あいつは強い子になったから。
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