レイコーン
それは王が守る砂漠の泉。
闘技場なんてすっぽりと収まってしまう。

泉からは一本の長い長い川が延びていて
空に流れる川の終着駅こそがこの闘技場だ。

 

入り口には
衛兵の姿が見え

「間もなく試験開始です。候補者の方は会場へどうぞ。応援の方は応援席へと移動おねがいします。」

と来る人に繰り返している。


「ね、なんだか気分がわくわくしてくるね。」
 

「マール。お前、出ないだろ?」
 

「うん。でもね?」
 

ニコスの肩がぶるっと震えた。
 

「緊張、してきた?」
 

「そこそこ・・・ね。じゃ、俺こっちだからまた後で。」


「ニコス、応援してるよ!幸運を!」

 

フッとニコスが笑ったのを確認すると
マールは観客席に進み、ニコスは参加者用の通路を進んだ。


「席、席っと」


席は自由に座ることができた。
関係者らしき人があちこちで志願者の試合の見学をしている。

 
「少し、ざらざらする?」
 

自分の左手を見ると
さらさらと砂がこぼれおちた。

 
客席のすべてが黄色い砂で出来上がっていて
それぞれの客が座りやすいように形を変えるようだ。

 

「すごいつくりだねぇ・・・。リリー?」

 

広い舞台が必要な場合
この砂の客席までが舞台に変形できるのだと
リリーはマールに語っていた。
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