レイコーン
「ここがそう?確か夢の世界に行くと元の自分には戻れないんだよね?」
ガラスの破片程度の不安を抱えながらも噂は噂。
マールは、気にしないで進みだした。
クスクスクス・・・。
しばらく歩いていると
背中の方から声に
ならないようなかすんだ高い音が聞こえてくる。
なんだか誰かに見られている気がしてマールは振り返った。
「誰もいない。誰もいないよね?」
不安に駆られた
人間が1人になると
ぶつぶつと独り言が多くなりがちだ。
彼の視界には
古めかしいレンガの建物で覆われた路地が映るだけ。
足元には大きな水溜りが見える。
いつの間にやら雨は小雨に変わっていた。
「行こう。」
再度、歩き始めたマール。