レイコーン


 

「もちろん。さぁ。」

 

その態度を知ってか知らずしてか、
ニコスはやわらかい笑顔で
マールに手を差し伸べた。

 

すると、

ガチャン。キィィィィ・・・
という音を立てニコスの後ろにある門は静かに開きだす。
門の手前にあった猫の像は消えていて赤いゴミ箱しか置いてない。

 

門が開くと同時にしてくる甘い香り。
何の匂いかわからないが妙に眠気を誘う。

 

「なんだか急に眠く。」

 

そういえば、思い出した。
メビウス通りの奥には人食いがいるって噂だ。
しかも、ここにいるニコスから聞いた噂。

 

マールのまぶたはもう半分閉じている。
ニコスの顔が良く見えない。
まぶたが重い。

 

最後の力を振り絞って聞こえるか聞こえないかの声でニコスに問う。


「ニコス、前に言ってた人食いの老人ってここの人かい?」


ニコスは、笑って答えた。
 
 
「内緒♪」


「え!?」

マールはそのまま深い、深い眠りに落ちていった。
< 38 / 126 >

この作品をシェア

pagetop