レイコーン
要領の悪さと言うか興味をもたれない姿と言うか。
新しいクラスになって早一ヶ月。
マールは常に頼れる存在がいないことをひしひしと感じていた。
21ページはタイトル『私の好きな歌』という小説の一文だ。
本読みの極意は気持ちを込めて読むことらしい。
何の因果からか、昔から音読は
気持ちをこめて読む人ほどうまいとされている。
『気持ちを込めて読む』なんて簡単には言うけれど、
周りの助けがないとなかなか難しい。
クラスのリーダーなんかが読めば
例え多少、下手だったとしても読み終われば歓声が待っている。
それに引き換え、
浮いた人間が演劇じみて読めば、
目に見えない氷の槍が複数の方向から飛んでくる。
マールには周囲の温かい目もなければ期待もない。
本気で演じて見せたとしても、
周りは温かい目で見てくれるどころか冷たい視線を送られるだけ。
いや、冷たい目線があればまだいい。
それすらない人間はただ、自分の心が削られる。
マールには
『気持ちを込めて読む』
なんて気恥ずかしいことなんてできるわけもなく、
今回も彼は、ただ機械のように国語の21ページを棒読みしていた。
悲しさは音に現れる。
マールの音読は悲しさと元気のなさが入り混じり
先生から激が飛ぶ。
「聞こえないぞ?」
そう言われても
今の状態ではこれがマールの全力だ。
学校はマールをあきらめ、
授業はどんよりした苛立ちから来る先生の激が飛び、
休み時間は孤独。
友人だって、毎回マールには合わせられない。
そんな繰り返しの毎日。