レイコーン
街を少し歩くと
前方の方から鶏のような顔をしたおばさんが叫んでいるのが見えた。

 
『いらっしゃいいらっしゃい、ウチの黒焼きタマゴは最高だよ~』 

 
「黒焼きタマゴ…。」

 

その姿はどう見ても失敗した玉子焼きだ。
唯一の救いは一口サイズに切ってある事だろう。

しばらく見ていると
黒い物体が出来上がっていくたび
手のひらサイズの紙袋の中に惜しみなく詰め込まれている。

 
「おや?アンタ・・・」
 

鶏おばさんがこっちを向いて声をかけてくる。

 

「アンタ旅人さんだね!わかるよ。あたしゃここに暮らして長いもの!どうだいこの黒焼きひとつ味見してみないかい?」
 

その威圧感は商売をする人の圧力だ。
 

「え?でも、あまり体に・・・」
 

『見た目OUTは味もOUT』マールの法則だ。
 

「いいからいいから、一口!」
 

ほぼ無理やりにマールは口の中に黒焼きタマゴを放り込まれた。
はっきり言って予想通りの味だ。2口食べればもはや限界がやってくるだろう。
 

「どうだい?おいしいだろ?私の飼っている鶏のもんだよ。」
 
「まず・・・。」 

ニコスが言っていた。この国は『まずい』禁止。
はっとしてマールは感想を言うのをやめた。
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