天国の丘
祭の後にやって来る静寂程、人の心にぽっかりと穴を開けてしまうものはない。
その祭が、哀しみを無理矢理、何処かに押し隠したものであれば、尚の事、その虚脱感は大きい。
朝方近く迄続いた大騒ぎも、太陽の光りに追い立てられる吸血鬼達のように、あっという間に去って行った。
アパートの連中も、リュウヤさんとリサを残して皆、帰った。
食い散らかした食器や、飲みかけのグラスを片付けていた僕は、カウンターの中で洗い物をしているレナに言葉を掛けた。
「すごい盛り上がりっだったね」
「そうだね」
「レナの歌も良かった」
「ありがとう。コーイチもステージに上がっちゃえばよかったのに」
「今夜は僕の出る幕じゃないよ。それにしても見違えた。あんまり綺麗になっちゃったんでびっくりした」
レナがはにかむようにして、
「からかわないでよ」
と言った。
僕達のやり取りを聞いていたマーサが、
「アンタ、そのセリフを言うのに何時間掛かってんだい。お日様が昇っちまってからじゃ彼女をベッドに誘えないじゃないか」
と僕をからかう。
適当にピアノを弾いていたリュウヤさんまで囃し立てる。
そして、リサも。
笑い声が絶えると、何とも言えない空気が漂った。