TO-KO
「…いつも、この位に待たせないでくれるとありがたいんですケドネ」


またまた、急に聞こえてきた声のほうに視線を向ける。屋敷の門の方から歩いてくる青年。
絹糸のように真っ白い髪が真っ先に目に付く青年は、自動車の鍵を右手の人差し指でクルクル回して、眉間にシワを寄せていた。青紫色の瞳は鋭くシンを射抜いている。


「今日は得意の植物学しかなかったんですって正直に言えばよろしいのに」


「ベ、ベル…」


「ベルフェゴールさん…。お、お疲れ様です」


シンは、瞳子の背中に回って隠れてしまった。

「本当に。まったくどうして私が子供のお守りみたいなことをしているのでしょう。私はただの運転手ですよね?そうですよね?褒美に、あの馬鹿アルフレッド…じゃなかったアルフレッド様のあの綺麗な顔に一発、パンチをぶち込んでも平気だと思いません?いや、ぐちゃぐちゃになるまで僕は手がとめられないかもしれませんね。まぁ、原型をとどめないほど殴ったら人って死にますけどね。でも、それならそれで一つ重荷が減って気持ちがスカッとするのでいいですけど」


「「…………」」




早口で物凄い事を口走っている。ベルフェの不穏なオーラに2人は圧倒されて、何も言えない。
美しい白髪をサイドで纏めている彼は見るからに王子様だ。しかし、実際はこの屋敷の専属運転手である。所謂、雇われものだ。

見た目は完璧だか、この見事な毒舌を聞いてしまうと人って簡単に信用できないと気付いてしまう。



「ああ、トーコ」

「は、はい」


「君もお疲れ様。まぁ、拾われものだから働かなくちゃいけない義務があるだろうけど」


「!!」


ベルフェゴールはそう言うと、瞳子を一瞥して、踵を返し来た道を帰って行く。


「ちょっと…、ベル…!」


シンは、瞳子への言葉に小さいながら不信感を得たのか、温和な彼が珍しく大きな声でベルフェゴールを呼び止めようとした。しかし、ベルフェゴールの足は止まることはなかった。
< 16 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop