TO-KO
拾われもの。
確かにそうだ。
瞳子は、この国の、強いてやこの世界の人間ではない。
自身がある者に罰を与えるのを躊躇ったため、優しい魔術師が瞳子に手助けをし異世界へと逃がしてくれたのだ。
そして、降りた先がアルフレッド達の居る世界、居る国だったのだ。
いきなり現れた瞳子に不信感を持たずに、アルフレッドは温かい心で、瞳子を召使いとして雇ってくれたのだ。
彼は、優しく微笑んで瞳子に此処に居て良いと言った。
素性も何も分からない彼女にだ。
よってマチルダが瞳子に不信感を抱いているのも仕方ないことなのだ。本当に素性がわからないのだから。
しかし、アルフレッドは瞳子が自分の口から話すまでけして説いてはこないだろう。
拾われもの−。
しかし今更、どうしてこんなに胸に響くのかと瞳子は思った。
(まさか、あたしはこの世界の人に受け入れてほしいと思っているのだろうか。
つけあがってはいけない。
だってあたしは―)
「トーコ、大丈夫…?」
はっと顔を上げると、小さいシンが背伸びをして瞳子の顔をのぞき込んでいた。珍しくシンは表情を曇らせている。
「…はい。大丈夫ですよ」
瞳子は、そんな優しいシンに心配をかけたくなくて無理やり笑顔を作ってシンに微笑む。
シンはジッと暫く彼女の顔を見つめると
「トーコ。お庭、行かない?」
と言った。
瞳子は、少し不意を突かれた。庭には行こうと思って行ったことがなかったからだ。
庭とは、この屋敷の中庭の事である。中庭といっても相当な広さがあるのだが。
「庭、ですか?では、この洗濯物を干してからでよろしいですか?…シン君は、そのまま行かれるのですか?」
「うん。元々、そのつもり、だったから。僕、待ってる」
「そうですか。ではなるべく早く済ませますね」
「うん」
心底、嬉しそうにシンは笑った。
そんなに庭に行くことが嬉しい事なのだろうか。
そんな事を思いながら、瞳子は洗濯物をせっせと干し続けた。