短編小説集
次の年になるとどんな偶然か、小林先生が担任になった
嬉しいとは、微塵も思わなかった
迷惑だとすら思った
好きになるなら普通の人がよかったのに
危ないことはしたくないのに
私は臆病だから
悲しい思いをするくらいなら、友達を作らなければいいんだって考えるくらい、臆病だから
初めから無理な恋を続けたくなんかないのに
「斎藤、お前放課後職員室な」
「え」
「ちょっと頼みたいことあんだわ。暇だろ?」
部活に所属していないのは私だけらしかった
そのせいで、先生は放課後に雑用を私に押し付けた
部活に所属していたって暇な人はいくらでもいたように思ったけど、まぁ、断ることもしなかった
「悪いな、いつも」
「そう思うならこんな作業自分でやってください」
「いやぁ、細かい作業が苦手で」
「ピアノは好きなのに?」
「それは言わない約束だろ」
誰にも聞かれていないことを確認するように、先生はキョロキョロと回りを見回す
その必要はないと思う
今私たちは職員室から移動して、コンピューター室で作業をしていた
他の人なんか、誰もいない
作業と言うのは翌日の新入生オリエンテーションで使われる資料をホチキスで留めると言う単純なもの
が、量が半端じゃない
一学年分だから約250人分の資料を纏めなくてはならない
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