アイ・マイ上司とlove★battle
一本路地に入ったバーを目の前にして、そっと強い腕に包み込まれた私の身体。
街中だと分かっていても、恥ずかしさよりも嬉しさに包まれていれば…。
「酒飲みながら泣いてた…?」
「な、いてな…っ」
何でもお見通しといったお尋ねにも、悔しさを覚えて返すのは中途半端な反応で。
「フッ…、説得力無いけど」
そう笑って腕の力を強めた彼に、やっぱり私もギュッとしがみつこうとしたのに。
「・・・っ」
優しい声色と温かい胸の中で安心したのも束の間…、ツンと鼻についたある香り。
ソレが今まさに彼の背中へ回そうとした私の手を、ピタッと止めさせてしまう。
「は、な…して…っ」
その強い香りに吐き気がして、反射的にグイグイと眼前の胸を押し返していた。
「どうした…」
「っ、や、だ…!」
すぐに察知した彼が声色を落として尋ねてくるから、余計にポロリと頬を伝う涙…。
輝の印象そのままなオリエンタルな香りと混ざって、主張するローズの女らしい匂い。
今日初めて嗅いだ香りでも…、しっかり頭の中に刻み込まれているのに・・・