ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
「どうすれば良いんだよ!?」
寒気がする様な焦りに彼は少女の肩を掴もうと、腕を伸ばした。
肉が崩れようと、もうどうでも良かった。
しかし。
彼の掌は彼女の身体に触れる事は無かった。
「な……」
――すり抜けた。
さっきは掴めた筈の身体に、腕は空を切ったのだ。
彼女の身体はさっきよりも淡く、明らかに後ろの景色が透けて見えている。
キラキラ光を放ちながら、少女の輪郭が薄く淡くなってゆく。
「鍵を…」
少女は小さく言葉を放った。
「鍵?」
その指は、塔の扉に掛けられた鎖を指さし、銀色の花に視線落とした。
「この花で開けられるのか?」
少女の瞳が真っ直ぐ彼を見据え、答えを述べる事なくキラキラと光に姿を変えた。
「まっ…」
腕を伸ばしても指先に触れるものは無く、彼はがくり。と膝を落とした。
その下で壊れた音を立てる銀色の花。
充は暫くの間、自分の掌を見つめていた。