ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
少女はしばらく彼を見つめた後、そっと自分の腕に手をかざした。
その掌から暖かい光が漏れ、崩れ落ちた腕が元の形を取り戻してゆく。
完全に原型を取り戻した細い腕。少女は落としていた瞳を、もう一度彼へと戻した。
彼は未だ怯えた瞳と強ばった表情をしていた。
少女は悲しそうにうつむくと、彼に背を向けて塔の方に歩き始めた。
「待っ…て…」
言いかけて、彼の身体に衝撃が走り抜けた。
少女を引き止めようとする気持ちさえ怯ませるものが、彼女の背中にはあったのだ。
背中の白い布地にべっとりとした深紅の染み。
それは背中一面を覆い尽くすほどの面積を所有していた。
少女はゆっくりと振り返った。
その表情は悲しみに歪み、紅い瞳には涙が浮かんでいる。
「助…けて…」
絞り出す苦痛に濡れた声は、夢の中のあの声のまま…