ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
ギィ……
重たい扉はもう何年も開けられなかった様な、錆び付いた音を響かせて開いた。
塔の中は昼間だというのに、漆黒の闇がじっとりと支配している。
夜のような暗さと静けさ。
扉から差し込む光は、ほんの数メートル先までしか届いていない。
埃にまみれた塔の中。
蜘蛛の巣が所々にアーチを描きいている。
彼はリュックから懐中電灯を取り出すと、躊躇う事なく塔の中へと足を進めた。
足を進めるごとに舞い上がる埃にむせ返りながらも、彼の足取りは怯むことを知らない。
少女の苦痛に歪んだ表情が、頭の中に焼き付いて離れないからだ。
彼の中の何かが彼をひたすらに突き動かしていた。
塔の中は螺旋階段を中心に円上に部屋が作られている。
その螺旋階段を上へ上へと上がってゆく。
ひんやりとした石造りの壁に囲まれた塔の中は、牢獄のように閉塞的だ。
この階段はまるで、死刑台や地獄へ繋がっているように感じる。
終わりのない、闇。