ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
階段を上がれば上がるほど、足元に銀色の花が増えてゆく。
土も水も空気すらないような、こんな闇の中で、この銀色の花は息吹いているのだ。
灰色の塔から、命を吹き込まれているかのように。
いま何階なのか、もうどれくらい登って来たのか、徐々に感覚が無くなり、ただ、ただ、ひたすらに続く果てしない闇に気が狂いそうになった。
しかし、彼はただただ上を目指した。
その先に何が待ち受けていようと。
今となればもう怖くなかった。
ふと気づけば、銀色の花だけでなく、鋼色の蔦が壁を覆うように絡みついていた。
どれほどの時間をかけたのか、ようやく螺旋階段を上り切ることができた。
これほどの階段を登るには相当の体力を費やすはずが、疲れすら感じることがなかった。
塔の最上階は、壁一面は鋼色の蔦にまみれ、床は銀色の花に埋め尽くされていた。
そこには小さな木の扉がひっそりと佇んでいた。その扉の手前で蔦は成長を止めている。