ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
彼に気付いた少女は掠れた声を絞り出した。
「翼…?」
「下の階の向かって左から2番目の部屋に翼が有るの。」
巻くし立てるように言葉を並べて、すがりついてくる細い腕。
「それを持ってくれば良いの?」
圧倒されながら答えると、少女は黙って何度も頷いた。
真剣な眼差しに噛み締めた唇。
腕を掴む指先が震えていた。
彼は少女の身体を放すと、来た道を走る。
何故か分からないけど酷い焦燥感にさいなまれた。
何故かは、分からないけど……
酷い酷い焦燥感。
大きな大きな消失感が。
充の心臓を刺激する。
螺旋階段を駆け下りて、少女が言った向かって左から2番目の扉を見ると、不自然に蔦が切り取られて、壁から下に垂れ下がっている。
そのドアノブに手を掛けて回してみると、またもや鍵は掛かって居らず扉は簡単に開けることができた。
「………」
息を呑む。