ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼


部屋の体積は少女が居た部屋と体して変わらないようだが、窓が無いせいか、暗闇がどこまでも続いていくような、そんな気がした。



その部屋の中で、その存在を主張する物。



機械仕掛けの真っ白な翼。



その美しさに魅了された。
彼はしばらくの間、すべてを忘れ、その翼に見入っていた。
自分自身が何者であるのか、それすら忘れてしまいそうなほどに。



どれくらいの間、そうして居たのだろう。
吸い取られてしまった焦燥感と消失感がひょんな拍子に一気に蘇り、慌ててその翼を抱えた。

見た目が大層大きいから、重さも結構あるのかと思いきや、驚く程軽かった。



重さすら感じない。
羽根でも抱えているような気分のまま階段を駆け上がった



少女の居た部屋は充が閉め切れてなかったのか、少し開いた隙間。

その隙間から漏れる光。
そして、優しい微風が前髪を揺らした。



おかしい。
おかしいのだ。
何故、風が吹き込んで居るのか。
塔には風も光も音すら無い密室で。
少女の部屋の窓も、キッチリと閉められていたはずなのに……


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