ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼


いつしか森は、静寂と重い漆黒の闇色に包まれていた。
木々の隙間から覗く藍色の空。
その雄大なキャンパスに広がる幾千もの星屑。
今日は月が満月で、真珠色の光がとても明るく彼の身体を照らし出していた。
そのおかげで、特別恐怖も感じずに、リュックに詰めていたサンドイッチを頬張り、空腹を満たすことが出来た。


空腹が満たされると、うとうとと、心地良い眠りが押し寄せて来て、彼はそのまま、その眠りに誘われて睫を伏せた。







――眩しい日差しと、暖かな春風に自然と眼が覚める。
薄くまぶたを開くと、視界がゆらゆら揺れ、太陽に眼が眩んだ。


しばらく思考が回らずに、ぼー。としていたが、自分の目的を思い出し、重い身体を起こす。


立ち上がり新鮮な朝の空気に伸びをした、


次の瞬間。




「―――…」




彼は自分の眼を疑った。
つい昨晩までは、目の前に薄暗い森が続いていた。確かにそうだった。


目の前に広がる木々の立ち並ぶ森だった場所は、今では木々がきれいなアーチを描くように開けて、日差しに輝く水面と、その傍に凛とした立ち振る舞いで、くすんだ灰色の塔が聳え立っていた。



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