ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼
パキ……
いとも安易く折れてしまう茎。
花を掌に納め、握り潰すと、パキパキ…。と乾いた枯れ木を折るよりももっと金属的な軽い音が響き、掌に痛みが走った。
ポタポタと、したたる紅い雫。
彼は何かに取り憑かれた様に、したたる深紅の血を眺めていた。
その時。
ヒラっと白い物が眼の端を掠めて、はっと意識が弾ける。顔を上げると、金色に揺れる髪の毛が見えた。
「――……」
突然の事に驚きを隠せない。
淡い輪郭の中の瞳が、くるくると回った。
ひらひらと風になびく白いワンピース。
そのワンピースの色に負けない程に白い肌。
蜂蜜色の背中まである長い髪にはやわらかいウエーブがかかっている。
細い華奢な肩には、今にも折れてしまいそうな骨が、くっきりと浮かび上がっている。
その後ろ姿は、このおとぎの国ような美しい世界の中でも、ぐんを抜いて美しかった。
「あの……」
彼は高鳴る胸を押さえ、小さな声を絞り出した。
その声に目の前の少女は、髪をまるで風と共に泳がせるように揺らしながら、ゆっくりと振り返ってみせた。