ガラス細工の花と機械仕掛けの白の翼


「――……」



彼は息を呑んだ。
振り返った少女の瞳は、驚くほどにきれいな紅色をしていたからだ。
その瞳は何処か悲し気に歪んでいる。



「君が…君が…夢の…」



彼は早る想いが溢れ出し、少女の細過ぎる腕を掴んだ



ズル……



肉の剥がれる音。



「うわっ」




少女の腕は掴んだ場所からズルリ。と肉を落とし、白い骨が剥き出しになった。生まれて初めて人間の骨を見た彼は、動揺した。



愕然と現在、眼の前で起きた状況を必死で理解しようとするが、よくよく考えれば、少女の現れ方もおかしい。
これだけの金属の花が咲き乱れている場所で、足音一つ立てずに現れることなど不可能に等しい。



少女は人間では無いのだ……


混乱した脳が叩き出した答えに、頭から面白いくらい分かりやすく血の気が引いてゆく。
少女はそんな彼の表情を泣きそうな瞳で見つめていた。



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