”未完全”
「あんたさ~、最近生意気なんだって!!!
ちょっと可愛い顔してると思って、
いい気になってるんじゃあないの!
気に入らないんだよね!!!」
綾乃は、高校の先輩達に、取り囲まれて
いた。不良グループ達である。
やばいと、思った時には、もう遅くて、
逃げ出せる状況ではなかった。
ただ、不思議と、そんなに、
恐怖感は、なかった。
ある意味”生意気”な自分を、
この不良達は、見ていてくれている。
恐怖と安心、両方が、存在していた。
「あの、気に入らなくていいです。
先輩達に、気に入られたいわけではないから。
でも、当たってます、生意気なの、私、人って
物を信じてないし、社会の事、なめてますから。
でも、どの同級生も、そんな私の事、見抜けないの。
それって、けっこう疲れるんです。
だから、今、”生意気”って言われて、
すっきりしました。」
不良グループ達は、そんな綾乃の発言に、
目を丸くし、返す言葉を、忘れていた。
そんな中、一人の先輩が、笑い始めた。
それにつられ、他の先輩達も、笑いだしたのだった。