ダイヤモンド・ヒーロー
食堂のおばちゃんに手紙を渡した。
「今年も“21日”に届くようにすればいい?」
「はい、お願いします」
俺が1年のころからお世話になっている、おばちゃんが出てきてくれた。
この人は――― 俺が毎年、咲良に出す手紙について、何も聞いてこない。
咲良の名前だけ書かれた手紙を、何も言わずに受け取ってくれるのは。
おばちゃんがすべてを分かっているから…… だろう。
「じゃ、お願いします」
「はいよ……。 今年で最後なのに―――」
俺はおばちゃんの言葉を最後まで聞かずに食堂を出た。
“今年で最後―――”
この先の言葉は、容易(ヨウイ)に想像がつく。