キミの心の声を聞かせて

「じゃあ、あれは?」と雄大が勧めたのは、いま話題のバンド少年の映画だった。


「俺達にピッタリじゃね?」


「そうだね。それにしようか」



なんだか楽しそうな映画に期待が高まる。


と、共に緊張のピークも増してきているようで


「ちょっと、ごめん…お手洗いに行ってくる」



「あ、分かった。じゃあ適当に飲み物買っておくな」


そう言ってくれた雄大に、もう一度「ごめん、頼むね」と告げてお手洗いに向かった。



「ハァ…ダメだ…緊張で胃が痛くなってきた…」


水道の蛇口を捻って勢い良く流れ落ちる水で、気持ちを落ち着かせようと何度も手を洗った。


鏡に映るあたしの顔は緊張の余り引きつってる気がする。

こんなんじゃダメと鏡に向かって笑顔の練習したあと、何事もなかった顔で雄大のところに向かった。





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