浮気女の嫁入り大作戦
それに、大抵車内で眠ってしまう奈緒は、彼に覚えがないのである。
沢田はいつも逆方向の電車に乗るが、少年は沢田と入れ違いでこの列車に乗っていたということだ。
何たる偶然。
犬が俺になついたのも、きっと奈緒に沢田のにおいが付いていたからだろう。
「いや、たまに見かけて、キレイな人だなって思ってて」
「そ、そうなんだ……」
キレイな人を否定しないところが奈緒らしい。
こういう時くらい謙遜を覚えてもらいたいものだ。
「それがまさか、兄貴の彼女だなんて」
「いや、その、そうじゃなくて……」
「え? 違うんすか?」
彼女だというのは誤解であるが、まさか浮気相手だったとも言えない。
かといって会社の同僚であったと言うのも、朝帰りの説明が付かない。
奈緒はどうしようもなくなって、とりあえずあははと笑う。
「そうだよ、俺の女」