浮気女の嫁入り大作戦

「なによ」

 驚いた奈緒から、一瞬だけ暖かい感情が溢れ出した。

 生きている人間で言えば、ドキッとしたというところか。

「逃げるだろ。フラフラしてるくせに」

「ふん」

「捕まえとく」

「……ふん」

 それ以降、二人は手を繋いだまま黙って歩いた。

 春の夜風がどこかの桜の花びらと共に吹いてきて、奈緒の髪を揺らす。

 見た目だけでいえば不釣り合いな二人だが、こうして後ろから眺めてみると、手を繋いでいる様はなかなか絵になっている。

 前から見れば口も目も半開きで息は荒く、朦朧としている酔っぱらいだが。

 奈緒は沢田に支えられながら樹のことを考えた。

(だらしない女だって思われてないかなぁ)

 思われるも何も、お前はだらしない女じゃないか。

 だらしない女にしては、樹の前では頑張っていると思うけれど。

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