揺れる
 奪い去りたい。



 その人の笑顔を引き出した、隣を歩く相手から。



 唐突に私の欲求は溢れ出した。



 でもどうすればその人の隣を歩き、笑顔を向けてもらえるようになるのか私はわからなかった。



 あなたになりたい。



 あなたになれば、近づく方法がわかる。



 だから、それがどうしようもない願いだったとしても、あなたになりたいと思った。



 そんな願いを抱きつつ、私は今も変わらない。



 相変わらずその人を離れたところから見つめている。



 変わったといえば、時が重なるにつれ、その人への想いが積み重なり、私の目に錯覚を見せる。



 その錯覚は、その人を輝かせる。



 そして私はその輝きに目を奪われ、目眩を覚えていた。


―おわり―
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